「Buddha-ism」
 
みずきりょう著

    連載第68回




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第五章 「アーラヤ識」と「唯識派」

 



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14 「華厳経」と「法華経」の世界③



 <如来寿量品(にょらいじゅりょうほん)第十六>

 第十六の前項(第十五)には、大地が避けガンジス川の砂の数ほどの菩薩が現れ「法華経」を説く。そして、多宝如来・釈迦如来のいる場に至る。その場で、弥勒菩薩がこの菩薩たちはどこから来たのかと如来に尋ねると、永遠(くおん)とも言える過去から法を説き続けていると告げる・・・と言う伏線があります。

 そして第十六品では、前項を受けて、弥勒菩薩に<如来の寿命は無限>だと説きます。さらに、私(お釈迦様)は世間で伝えられている通り(紀元前500年頃)悟りを得たと思っているかもしれないが、実は悟りを得てから既に永遠とも言える時間が経過している。ただそれでは分かりにくいので、滅度し、その頃に再生したように演じたに過ぎない。このように告げます。そして、その理由として「医者が薬を飲まない子供を救う時、死者に父親の死を告げさせる。すると、悲しみの結果として薬を飲み助かる。その後、父親が現れる」と言う比喩が示される。

 この項は「法華経」の中で最大のクライマックスと言われています。そして、やはり2つのポイントがあります。1つ目は、如来は永遠で、それを補佐する菩薩も永遠かつ膨大な人数で、どの時代のどこでも人々を救済していると言う点。

 第2ポイントは、深遠な法が分からなくても、あらゆる手(方便)を用意し、全ての人を救ってくれる、と述べている点。

 以上から、<いつどこでも、どんな人でも救われる>。それを信じさせるため、膨大なスケールをベースとした演出が施された経典、それが「法華経」と言えるのではないでしょうか? 

「法華経」は最も広く読まれている経典でもあります。その理由も、<圧倒的スケール>と<誰でも救われる>という内容にあると考えられます。なお、「観音経」と言う有名な小教典がありますが、これは<「法華経」観世音菩薩普門品(かんぜおんぼさつふもんほん)第二十五>の事です。

 ただし、「華厳経」と同様「法華経」も「大乗仏教」の重要経典でありながら、インドではそれを主軸とするグループは現れませんでした(ただし「唯識派」等に影響を及ぼしたことは間違いない)。しかし、後代になり中国で天台智顗(てんだいちぎ)等のスーパースターが現れ花開きます。

 


知って得する「仏教用語」今回は、「華厳」「法華」に関する中国のスーパースター2名を紹介。

 

*「法蔵」・・・(ほうぞう・643年〜712年)は、「華厳宗」の初代・杜順(とじゅん)、二代目・智儼(ちごん)に続く第三祖。ただし、同宗の思想を体系付けたのは彼と言われており、「華厳宗」最大のスターと言っても過言ではない。彼の著書「華厳経探玄記」「華厳五教章」も「華厳宗」のバイブル的存在。

 

*「天台智顗」・・・(てんだいちぎ・538年〜597年)は、中国・南北朝〜隋代の僧。「天台宗」の初代・慧文(えもん)・二代・慧思(えし)に続く第三の祖(ただし、異説あり)と言われる人物で、「天台宗」の集大成者。同宗最大のスーパースターでもある。著書は「摩訶止観」「法華玄義」「法華文句」など。また、5時(5段階)の教相判釈(経典に順位を付ける事)者としても有名で、華厳時・阿含時・方等時・般若時・法華涅槃時と言う経典のランク(スタートの1時はラストに次いで重要であるため、ランクとしては阿含・方等・般若・華厳・法華<天台>の順となる)付けを確立したことでも有名。

67:最澄像_一乗寺蔵

「最澄(伝教大師)」・・・平安時代の高僧。周知の通り比叡山延暦寺を根拠地として、日本に「天台宗」を広めた。 画像:Wikipediaより


66:天台智顗

「天台智顗」・・・詳細は上記<知って得する「仏教用語」>参照。 画像:Wikipediaより