「日本庭園と日本外構」:
NO153

「桂離宮」と言う芸術作品②!



 前項に続き「桂離宮」について検証します。そして、
この項では全体構成と庭園をメインテーマとします。

 

既に確認した通り、「桂離宮」は平安時代の王朝文化+江戸前期の茶道文化を融合させた、絢爛豪華な安土・桃山文化とは対極にある建造物であり庭園です。具体的には、基本構成は園遊を優先させた池泉回遊式、デザイン的には書院〜数寄屋造をベースとした、シンプルかつ直線的なものがベースとなっています。そして、デザイン面では「小堀遠州」イムズが色濃く反映されているとも言われています。「中沼左京」「玉淵坊日首」が作庭者(「遠州」の親戚&弟子)であれば、それも当然のことかもしれません。

 

より具体的に言うなら、発注者の八条宮智仁親王(「桂離宮」の創始者)が平安の昔を想定した回遊式構成を望み、「中沼左京」「玉淵坊日首」らが書院・茶室を要所に配して、シンプルなデザインに纏めた。このように解釈してもよいでしょう。

 

「桂離宮」主要部(庭園部)の構成を確認しておくと、大きな池、2つの島、各種水路があり、その中に3か所の茶室、園林堂(おんりんどう=観音堂)、書院などの建物があり、各所を回遊できるレイアウトとなっています。以上を、案内図(前項参照)の順により確認すると、庭園への入り口となる部分に御幸門というシンプルで数寄屋風の門があります。続いて、御幸道と言う直線の遠路があり、この段階でモダン系(シンプルな直線系)デザインで纏められていることが分かります。

 

庭園内に入ると、池とその周辺に、松琴亭・賞花亭と呼ばれる2つの茶室があり、茶室の廻り・アプローチは露地風のフォーカルポイントが多数造られ、シンプルに纏められています。また、賞花亭の奥には園林堂があり、複数の橋によりこれらが結ばれています。さらに橋を渡ると、メイン空間となる部分に辿り着き、ここに月波楼と言う茶室と新御殿・楽器の間・古書院・中書院(この4つの建物は連結している)があり、池を前面に庭全体を鑑賞できるようになっています。

 

これを見てもわかる通り、池に船を浮かべ楽しむ、水路で歌会を開く、茶亭(室)で茶会を開く、御殿・書院で庭園を観賞しながら宴を楽しむなど、鑑賞だけではなくエンジョイできる工夫が各所で見られます。ある意味、日本庭園の原点に返った作品ともいえるでしょう。また、建物に加え庭園内にも、中島・天橋立・洲浜・白川橋など多くの見所があり、目を楽しませてくれます。

 

この他、外構という視点で見た場合は、シンプルな門とよく合う竹垣が多用され、特に太い縦使いの竹と水平の細い竹枝を組み合わせた穂垣の存在が注目を集めます。江戸時代以降の庭園には竹垣が多数登場しますが、「桂離宮」はその先駆的作品の1つと言えるのではないでしょうか。


一口アドバイス。

「池泉回遊式・書院造・数寄屋造・露地の融合=桂離宮庭園!」

(みずき りょう)


153:庭園全景

庭園全景


153:月波楼〜松琴亭
月波楼内から松琴亭を望む

153:延段

延段:直線的アプローチ 

153:中島

中島

153:天橋立

天橋立 

153:土橋

 土橋

153:白川橋

白川橋

153:表門

 表門

153:穂垣

穂垣