「日本庭園と日本外構」:NO158

「知恩院」とその名園とは②?



 「知恩院」について検証中です。
この項では、本題ともいえる同寺の庭園について延べます。

 

「知恩院」は大寺であり、複数の庭園を持っています。代表的なものは「方丈庭園」「山亭庭園」「友禅園」の3種ですが、実は作庭の時代自体が異なっています。

 

上記3庭園の中で、最も規模が大きく最も重要視されているのが「方丈庭園」。その名前が示す通り、方丈にセットされた庭園です。その、「知恩院」の「方丈」ですが、「大方丈(おおほうじょう)」と「小方丈(こほうじょう)」に分かれており、京都でも屈指の名書院として、高い評価を受けています。両方丈とも1641年に造られており、建造物自体が江戸時代の代表的存在。

 

「大方丈」は二条城との共通性が多く、54畳の鶴の間、上・中・下段の間、松の間、梅の間、柳の間、鷲の間、菊の間、竹の間、武者隠しなどの部屋がある、大型の方丈です。一方、「小方丈」は6室からなり、「大方丈」と比較すると質素さが目立ちますが、よりハイセンスと言った評価もあります。

 

そして、「大方丈」「小方丈」を結んでいるのが方丈庭園で、ほぼ同時期の作庭と見てよいでしょう。この「方丈庭園」は小堀遠州の弟子ともいわれる玉淵坊の作と伝えられ、心字池をメインとした池泉回遊式庭園。庭自体の美しさ、東山を対象とした借景の見事さが売り物の庭で、茶室・葵庵、権現堂等を結ぶ園路にもなっています。

 

「山亭庭園」は言うまでもなく、山亭にセットされた庭。山亭は、法然上人終焉の場に造られた重要な建造物・勢至堂の客殿。同庭園は江戸時代末期の作品で、北西角に三尊石(阿弥陀三尊)があり、当然のことながら宗教色の強い構成となっています。また、庭自体が高台にあり、京都の町を一望できるという魅力も持っています。

 

「友禅苑」はその名が示す通り、京都・友禅染の創始者・宮崎友禅にちなむもの。ただし、生誕300年を記念して造られたもので、昭和の作品です。具体的には、1954年に改修造園。苑内には裏千家ゆかりの茶室・華麗庵と白寿庵があり、ゆっくりと散策を楽しみながらその美しさを満喫することができます。

 

このように、「知恩院」は江戸時代前期、同後期、昭和と言う、3種の名園を楽しむことができます。時代に伴う日本庭園の変化を体現するのも一つの楽しみ方かも知れません。

 

一口アドバイス。

「玉淵坊作と伝えられる知恩院・方丈庭園=最高峰の方丈と共に・・・」

(みずき りょう)



158:方丈庭園全景

 方丈庭園全景 


158:方丈庭園

 方丈庭園・二十五菩薩の庭


158:方丈庭園②

 方丈庭園・心字池


158:山亭と庭園

山亭と山亭庭園


158:友禅園全景

友禅苑全景


158:友禅苑

友禅苑の園路


158:友禅苑の池

 友禅苑内の池