「日本庭園と日本外構」:NO280
長浜観光の拠点「慶雲館」とは?
引き続き小川治兵衛の作品を紹介します。この項で取り上げるのは「慶雲館」。
「慶雲館」は滋賀県長浜市港町にある明治時代に作られた建築物と庭園。そして、全国的にも有名な「盆梅展」(1月~3月に毎年開催)の会場にもなっており、長浜観光の拠点でもあります。
「慶雲館」は1887年(明治20年)に明治天皇の行幸在所として、実業家・浅見又蔵(1839~1900年。太湖汽船社長、銀行頭取などを歴任。晩年は赤十字活動にも尽力)により造られました。従って、天皇の来訪に間に合わせるため突貫工事が行われたと言ったエピソードも伝わっています。また、浅見氏の別邸という目的外に、長浜市の迎賓館としても使われ、現在に至っています。ただし、庭園が造られたのは1912年(明治45年)で、2代目又蔵時代。作庭者は7代・小川治兵衛。
「慶雲館庭園」は表門~中門に至る部分の前庭、中門~本館玄関へと広がる本庭(奥庭)の2つに分かれ、各建造物を結んでいます。池・水路・園路等で構成される池泉回遊式庭園で、その意味では小川治兵衛の他の作品と同様。しかし、中門近くには巨大な灯篭が配され、水路・園路周辺にも巨石が多数設置されています。このような構成は、7代・植治作品では珍しく、施主である浅見氏等の意向がかなり反映されていたのかもしれません。部分的には荒々しさがあるものの、全体的には極めてバランスの良い構成になっている。このような評価が一般的ですが、筆者には珍しくアンバランスさを感じさせる作品であるように思えます。ただし、見方によっては、それが「慶雲館庭園」の魅力ともいえます。
一口アドバイス。
「小川治兵衛が造った慶雲館庭園。でもどこかアンバランス。それが魅力・欠陥?」
(みずき りょう)
長浜盆梅展
入口付近
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