き がたり
「木」語り 連載第56回
第八章:「木」の素晴らしさを再認識。そして未来へ!
23:みんなが大好きな「木」なのに?②
例えば、住宅関連のエクステリア(屋外)と言う分野では、コンクリートで作られた擬木、アルミの表面を木に似せたラミネート加工型材、木調の発泡樹脂素材、樹脂と木粉を混ぜて成型した樹脂木(人工木)、さらには樹脂木の芯にアルミ型材を使った部材まで、実に様々な<木に似せた製品>が開発され、急速にそれらを使った商品の使用頻度が高まっています。
その一方で、本家本元の天然木は<腐りやすいので使わない方が良い>と言う、事実とはかなり違った風評(わざと作られたものも含め)が立ち、使用頻度が減っているのが偽らざる現状です。
誤解の無いように指摘しておきますが、木に似せた製品(素材)が悪いと言うのではありません。各様の研究の上開発されたもので、木とは異なる長所を持っているからです。ただし、(木を含め)欠陥の無い製品(素材)など存在しません。
具体的には、擬木は木調の表面塗装が剥がれやすい・アルミラミネート材も表面ラミネート被膜が剝がれやすい・発砲系樹脂製品は劣化しやすく非常に燃えやすい・樹脂木は表面温度の上下が激しくかつ伸縮率が高い・樹脂木+アルミ素材は高額となりやすい・・・などの課題があります。
その一方で、天然木の無垢材に関しては、<腐りやすい>と言う、間違った情報がネットを通じ誇張され飛び回り、それがもはや社会悪と表現しても良いような状況に至っています。
「え、木って屋外で使うと腐りやすく長持ちしないのではないの?」
勿論、木のプロなら「木は腐りにくく長持ちするものから、腐りやすいものまで様々」。こう答えるでしょう。にもかかわらず、このような正しい評価は前出のネット情報では、ゼロとまでは言わないものの、超少数派でしかありません。例えば、エクステリア(屋外)と言う分野では有名になった「ウリン」(ボルネオ島産出の重く硬い木)は、同使用条件でも樹脂木等の2倍以上の耐久性(極めて腐りにくい)を持っています。
国産の天然木に関しても、樹種選び・部所(芯材、等)選び・施工方法等に注意すれば、樹脂木以上の耐久性を持たせることは決して困難とは言えません。要するに、木は上手く使えば決して腐りやすく、寿命が短い素材ではないと言う事です。
加えて、木は多素材にはない人を引き付ける魅力(風合い、等)、SDGsと言った視点に立てば極めて有効な素材だと言う+αも兼ね備えています。その一方で、特に樹脂が使われている素材の場合は、風合い・SDGs的視点では大きな問題を抱えています。
だからこそ、エクステリアと言う分野に関しても、天然木(特に国産天然木)が誤解から軽視されることは、社会にとっても一般ユーザーに取っても大きな損失であると言わざるを得ません。にもかかわらず、木のプロ(林業・木材流通加工業者・技術者、等)からはその良さに関する情報発信は殆ど行われていません(少なくともネット社会では少数派)。そこから、一般ユーザー(コンシューマー)が受ける損失には計り知れないものがあります。
また、上記した木に似せた複数素材と天然木は、敵対関係と考えるのも偏った判断だと言えます。両者は別の長所欠陥を持っているからです。
従って<適材適所>と言う視点で使い分け(例えば一つの現場でも、この部分は天然木・この部分は樹脂木・この部分はアルミ)する事が、最良の方法と言えるでしょう。
国産の天然木を使ったデッキ:樹種・部位選びと、正しい施工を行えば、最高の満足が!
天然木「ウリン」を使った門柱:人工木よりはるかに優れた耐久性と強度。ただし、熱帯雨林の開発問題が・・・